ホワイトマルベリーとは日本、中国、韓国が原産の桑の種類です。日本では「真桑」もしくは「カラヤマグワ」と呼ばれます。
古来から養蚕のために栽培され、野生化したものも多い植物です。つぶつぶした赤色や黒紫色の果実が思い浮かぶ方もいるでしょう。
しかし現在、ホワイトマルベリーで検索すると、赤や黒ではなく、白い果実のものがよくヒットします。
上の写真のような「ホワイトマルベリー」と称する、白い桑の実のドライフルーツが、あちこちで売られています。スーパーフードと呼ばれてもいます。
そして、これらの商品、ほとんどの輸入元がイランやイスラエルなど、中東の国々です。
「ちょっと待って!ホワイトマルベリーって日本など東アジアの桑なんじゃないの?」
首をかしげてしまいますよね。
ホワイトマルベリーは日本、中国、韓国など東アジアの植物で間違いありません。
なのに、日本人のわたしたちは、白い桑の実に馴染みがない・・・赤色か黒色の桑の実しか知らない方がほとんどです。
白い桑の実のことを、遠い国でしか手に入れられない珍しいフルーツだと思ってしまっている方も、少なくないのではないでしょうか?
ホワイトマルベリーのドライフルーツの説明には、東アジアを起点として、中東など世界に広まったのだとあります。それにしたって、中東にあって、原産地の日本にないというのは腑に落ちませんね。
どうして日本にはない?白い桑の実の正体
実は中国や韓国では、現在も白い桑の実が栽培されています。
中国では白桑葚とよばれています。白玉王とか、白珍珠といった品種があります。
白玉王(https://b2b.hc360.com/より)
「白い桑の実はスーパーフードといわれる人気のフルーツなのに、なんで中国や韓国にあって、同じ東アジアの日本にはないの?」
つい、そう疑問を抱いてしまいますよね。
「お金にめざとい中国人なら、きっと白い桑の実をたくさん栽培して、輸出してるだろう」
私などは、最初こう思ってしまいました。中国はドライフルーツ大国ですしね。
・・・しかし!
中国の大手通販サイト「陶宝網」で桑の実のドライフルーツを検索すると、出てくるのは黒いものばかりなのです。
「桑葚干」とよばれる黒い桑の実のドライフルーツが最もメジャーです。
どうして???
実は真桑(ホワイトマルベリー)には、白い実をつけるもののほかに、赤い実のもの、黒い実のものがあります。それらは皆、同じ真桑です。
そして、中国サイト「桑葚补肾,黑色好还是白色好?」によると、それらの栄養価の差は以下のようになるというのです。
薬用価値 | アントシアニン | モリン | ビタミン
C |
炭水化物 | 脂肪 | |
---|---|---|---|---|---|---|
黒色 | ◎ | ◎ | ◯ | ◎ | 多い | 普通 |
赤色 | ◯ | ◯ | ◎ | ◯ | 普通 | 多い |
白色 | △ | △ | △ | △ | 最も多い | 少ない |
アントシアニンとモリンはともに抗酸化物質です。生活習慣病の原因とされる活性酸素を抑える働きがあります。
また、このサイトの最後には、白い桑の実は糖分が高いので、血糖に問題がある人は食べる量を控えるようにとあります。
・・・だから中国のホワイトマルベリーは、白い実ではなく、黒い実が多く流通していたんですね。
なぜ海外では「白い実」が人気になった?
実は東アジア以外の地域には、中東原産のブラックマルベリー(学名Morus_nigra)という別の桑があります。
(英語版wikipediaより)
ヨーロッパで伝統的に栽培されてきたのは、上の写真のブラックマルベリーのほうです。
ブラックマルベリーはカイコ蛾に好まれず、養蚕に使えないため東アジアで広まることはありませんでした。
そして、このブラックマルベリーの実と、真桑(ホワイトマルベリー)の黒い実はそっくりなんだそうです。古来から、よく間違えられていたといいます。
英語版wikipediaによると、黒い実は果実だけで見分ける方法はなく、葉で見分けるしかないそうです。
そして北米にはレッドマルベリー(学名Morus rubra)という、また別の桑があります。
レッドマルベリ-(http://www.fnanaturesearch.org/より)
真桑(ホワイトマルベリー)は黒い実をつけても赤い実をつけても学名はMorus albaです。レッドマルベリーやブラックマルベリーと果実の外見は似てても、違うものなのです。もたらす効能もちがいます。
東アジア以外の地域の人々にとってみれば・・・
「真桑(ホワイトマルベリー)の効能は知っている。欲しい」
・・・そのため、同じ真桑でも、黒や赤の実のものではなく、白い実をならせるものが、「ホワイトマルベリー」という名のもとに、定着したのかもしれません。
それにホワイトマルベリーの葉の健康効果を利用するなら、実が白くても黒くても、あまり関係ありませんしね。
やっぱりホワイトマルベリー=日本の桑
長くなりましたが、まとめると、こうですね。
●真桑(ホワイトマルベリー)には黒い実、赤い実、白い実がなるものがある
●ヨーロッパや中東には真桑の黒い実にそっくりな実がなる他の品種の桑が存在する。それらは果実だけでは見分けがつかない
●白い実がなるものがあるのは真桑だけである
●しかし真桑の実のうちで、もっとも栄養価が高いのは黒い実である
・・・たとえれば、以下みたいな感じでしょうか?
東洋に黒、赤、白の真桑三兄弟がいた。
長男の黒、次男の赤、三男の白の順に出来がよかった。
三人は外国に旅に出た。
外国では白い三男がイケメンだと人気になった。
長男や次男は外国人に似てたため、間違えられやすく埋もれてしまった。
でも、やっぱり故郷の人たちは、長男や次男のほうが優秀だと知っている
ホワイトマルベリーの故郷のひとつである日本では、健康効果が高めである赤や黒の実がメジャーです。
つまり、中東からわざわざ白い桑の実を輸入するより、わたしたちの身近になっている桑の実をドライフルーツにしたほうが、よりよいものを食べられるってこと・・・ですかね?
うーん、商品流通の矛盾かも?
とりあえず、わたしたちの身近にある日本の真桑は
●葉は血糖値、血圧、高血脂症を防ぎ、ダイエット効果もある
●実はスーパーフード「ホワイトマルベリー」の上物である
●野生化しているものも多い。探せば無料でゲットできる
という、日本人に優しい植物なんですね。
ちょっと栽培してみたくなったかも
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